ツタバナ講師の宮川俊二です。
私はアナウンサーですが、ワイン好きが高じて2002年に日本ソムリエ協会のワインエキスパートという資格を取り、ワイン界にそれほど貢献したという覚えもないのですが、同協会から名誉ソムリエの称号もいただいています。
そんな関係からソムリエの皆様に話し方のアドバイスをしたり、サービスの在り方について雑誌に寄稿したりしてきました。
その際、よくお伝えするのが冒頭のフレーズです。
私たちは何かお話をする時、それが自分の時間だと思っていないでしょうか。
もちろん自分が何かを伝えるのですから自分の時間です。
しかし、それは同時に、話を聞かされる相手の時間をいただいている、奪っている、ということを忘れてはなりません。
レストランのソムリエサービスでは、料理をテーブルに運んで、説明をします。
その時、お客様は大切な商談に入っていらっしゃるかもしれませんし、恋の花が咲こうとしていることも考えられます。
そんな大切な時間をいただく、奪ってしまうのです。
では、この場面、お客様からどれくらい、時間をいただけるでしょうか。
私は「30秒にしてください」と注文をつけます。
それは私だけでなく、料理を作った厨房のシェフの気持ちも代弁するものです。
「熱いものは熱い内に、冷たいものは冷たい内に」口に入れたいものです。
サービススタッフが厨房からテーブルに料理を運びます。
そこで何秒かかっているでしょうか。
そして料理の説明は何秒でできるでしょう。
サービスに許された時間が30秒であるなら、何を、どう説明して、28秒くらいで、どうぞお楽しみください、という言葉までもっていくか。
それには日頃の訓練が必要です。
印象に残るキャッチをつける、「ほう」と思わせる新情報を盛り込む、だから、この料理を食べて欲しいという動機付けで締める…。
実は、こうした日頃の訓練は、レストランサービスのお話ではなく、皆様がこれから勉強したいと思われている「伝える話し方」のキーポイントになることです。
自分に許された時間は、どれくらいか。
その中でどうしても伝えなければならないことは何か、そのため、どんな話題を選び、どう構成するか。
私たちアナウンサーは現場で、いつもそれを考えています。。
皆様も、少しのヒントで、就職活動の自己PR、企業のプレゼンも、大きな成果が出るかもしれません。
長年の経験といいますか、苦心してきたことを踏まえ、皆様にお教えするというより、ご一緒に、より「伝わる」方法を考えていければと思っています。

ツタバナ講師。NHKでアナウンサーとして23年、フジテレビでキャスターとして9年。その後、早稲田大学で10年間教鞭を執る。人材育成・プレゼンテーション研究とプレゼンテーションパフォーマンスを得意分野とする。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート資格を持ち、ワインの造詣も深い。