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塾長 梶原しげる『私がアナウンサーになった理由』

ものすごく古い話で恐縮です。

高校生活も後半だったと記憶しています。

新聞広告に「英語に興味のある若者募集中!」と言う広告が出されました。

「貿易外語高校」という名前の職業高校に通う身としては反応しやすいキャッチフレーズでした。
クラスメートが、そこに記された番号に電話したら「是非説明会場に来るように」と強く薦められたのだそうです。

でも一人では怖いから「梶原、一緒に行かないか」と強く誘われ、私もついていきました。
雑居ビルの部屋に40人ほどの若者が不安そうな顔でひしめいています。

そこに、見栄えの良いスーツ姿の中年男性が始めたプレゼンテーションは迫力満点です。
彼はアタッシュケースから、厳かに、数種類のパンフレットと派手な筆記用具を出しました。

「私が、このセールスキットを使って売りまくったのは、この外国の百科事典!
 その結果得たお金で手に入れたものをご覧に入れましょう!こちら!!」

いつの間にか部屋は暗くなり、スライドには外国の車や豪華別荘が映し出されています。
この辺りで「怪しいな」と大人なら気づきますが「うぶな若者たち」は「おー!」と歓声を上げ、場は異様に盛り上がっていきます。

早い話がウン千円のセールスキットを買って百科事典のセールスをすれば何千円どころか、何百万円も儲かりますよという話は実にインチキ臭い!
その一方で、この集会ではそのセールストークのやり方を、講義に二人一組でのグループワークを交えそこそこ丁寧に教えてくれたのでした。

 この辺の事情はいまだに謎のままです。

驚いたの、講習修了後に「顧客見込みリスト」のようなものを渡され、いきなり「セールスにチャレンジ!頑張って行ってこい!」と言って我々を送り出したのです。

横浜の保土ケ谷にある団地の「リスト」を渡されたウブで律儀な私は、なんと真面目に現地に向かいました。

当然のことながら5軒10軒と廻っても外国製百科事典に興味を持って歓迎してくれる家などありません。
たぶん新聞広告を出した会社の本音は、広告で次々やってくる若者に、セールスキットを買ってもらうことだと察しがつきましたが、セールスで巨万の富を得たというおじさんの成功談も頭の隅に残っていたからでしょうね。


断られ、無視され続けて20軒目ぐらいでしょうか、百科事典のセールスマンを名乗る私を招き入れてくれるお宅がありました!
人の良さそうな上品な奥さまとお酒を召し上がっている旦那さんでした。

 「お前セールスか、おう、同業者だ!おれは車だけど、俺にセールスかけてみろ、納得したら買ってやる!」

「本番」は生まれて初めて!当然ながら、自腹で買ったセールスキットを出すタイミングから、セールストークの段取りまで、もうめちゃくちゃ!

 

1〜2分聞いたところで旦那さんは半ば切れました。

 「若造、セールスをなめ切ってるな!!勘弁ならねえ!」

 

つかみかかられそうになるところを奥様が割って入ってくれました。

 「あんたも大人げないわねえ。今日が初めてなのにこんなに頑張ったじゃない!」

 

夫をいさめた奥さまは、私にむかって笑顔で仰いました。

 「あなたのセールスはともかく、声はとっても素敵だったわよ、言葉も聞きやすかったし。
  きっとあなたなら、セールスに限らず声のお仕事で成功するわよ、頑張ってね、おつかれさま〜」

これが私がアナウンサーになるきっかけのひとつでした。