「は、はい〜」

新人アナウンサーの頃上司に命じられた最初の仕事は「電話番」でした。

アナウンス部の部屋にギッシリ詰め込まれたデスクの上に4〜5台の電話機が設置され、けっこうな頻度で「ツルルルル」と鳴る電話を同期の女子アナたち(この年は女子アナ三名、男子は私だけの計四名)と奪い合うように「取れ」というのが「業務命令」というか、他に私たちの仕事はありません。

「新人とは言え、君たちは、外から電話をかけてきた人にとっては【プロのアナウンサー】なんだから、それなりの覚悟で対応するように、いいね・・」ズッシリ響く先輩アナウンサーの厳かな命令口調に、女性たちは「は〜い!」と軽やかに元気いっぱい応え、気のちっちゃな私は「は、はい〜」と頼りなさげに返事をしました。

「プロのアナウンサーなんだから」という「重い言葉」を真に受け、暇さえあれば局の空きスタジオを見つけては「発声」「滑舌」の自主トレをするほど生真面目な私でした。

当時私が電話の取り次ぎをした数で圧倒的だったのは、深夜放送「セイヤング」で超人気の「レモンちゃん」こと、落合恵子さんと、「深夜の貴公子みのもんた」の、みのさんでした。

普段の落合さんは「レモンちゃん」というよりハイソなビジネスウーマンが「交渉事」話し合っているような感じ、みのさんは、会話の半分は大爆笑でラジオのまんまなのに驚きました。

 

一体相手の人はどんな方で、何をどんな風に話しているんだろうか?
以来、電話をしている人を目にすると、その人から聞こえる断片的な言葉から電話で会話をしている二人のやり取りを勝手に想像する「変な癖」が身についてしまったのです。

次回に続く