アナウンサー修行

前回お話したとおり、新人アナウンサー時代の私の「メインのお仕事」は「電話番」でした。
「電話」と言えば固定電話だった時代です。

 

現代の「固定電話」「スマホ」であれば電話先の名前が表示されますから、呼び出された側はいきなり「おー、〇〇君、何かあったか?」と出られますが、昔の固定電話ではそういうわけにもいきません。

 

 「おはようございます、文化放送アナウンス部です!」

3コール以内で受話器を取り上げ、ハキハキ、明るく、元気よく対応して、あいさつし、お名前用件を伺って、しかるべき先輩に、スムーズに取り次ぐ事が求められました。

こういうやり取りをデスクはきっちり聴いていて、こんなお小言を頂くこともありました。

「君のしゃべりは緩急がないから伝わりにくい。
 そもそも電話の声は相手先にとっても聞き取りにくいのだ。
 君、声のトーンを一音程度上げたほうが明瞭度が高まるというものだ。
 自分の体調や都合で話すのではなく、相手先の都合に合わせてしゃべる。
 それがアナウンサーたるものの基本だ。
 それからね、お待ち合わせの時間や場所など、大事なキーワードを繰り返して確認するときは、
 1拍間を空けて、話すスピードも緩め、言葉を高めて、立てるようにすると相手の記憶に残りやすい。
 それからなあ、君・・・・」

 

電話番はアナウンスメントの稽古場だったというわけです。
勉強になりました・・・

 

勉強になったと言えば、先輩たちが電話先の人と話している、その話しぶりに耳をそばだてることも「聴き方」を学とても良い機会となりました。先輩たちは、実に上手に話を聞いて会話を巧みにつないでいました。

 「はい、ええ、ほー、はー!うんうん、ええ?それから?!やっぱり!わー!!!そうでしたか!」

相手に見えるわけでもないのに、感心するところでは駿妙な顔をし何度も大きく頷き、面白いところでは膝を打って笑い、困ったときは顔をゆがめ、と表情仕草が実に多彩なのです。

先輩の話に耳をそばだて、しっかり観察することで「話芸」のようなものを学ばせてもらったというわけです。

 

今はあまり耳にしない「電話番」という仕事はアナウンサー修業にとって大変大事なものだったと今でも感謝しています。