梶原しげるです。
NHK放送文化研究所の研究員の書いた「大丈夫の境界線」という記事が大変興味深いので少しだけ引用しつつ、私見を述べます。
外国からの留学生が週末に開かれる食事会にさそわれ「ああ、大丈夫です」と答えたら、
その後、誘ってくれた相手の人から連絡がもらえなかった…
というエピソードです。
なんで、こんな理不尽なことが起きたのでしょうか?あ、もう、薄々答えが見えてきましたね・・・
「大丈夫です」の本来の、伝統的な意味は「問題ないです」「心配ないです」でしたね。
母国で「伝統的な正しい日本語」をしっかり学んできた留学生も当然「本来の意味=その日の食事会に参加することに何ら問題も無いので、行けますます、参加します、是非伺います」という意図で「大丈夫です」を使いました。
ところが、取り分け若い世代では「大丈夫です」を「不要です」と「断り」を婉曲に伝える目的で使うようになりました。
ファミレスやコンビニでの客と店員のやり取りを思い出してください。
ファミレスの店員に「コーヒーのおかわりはいかがですか?」と声をかけられ、おかわりしたい時は「お願いします」、おかわりはしたくないというときは「大丈夫です」を使うケースが増えています(ほとんどです?)。
ある程度年齢の行った世代にとっては「へんてこりんだなあ」とおもわれるやり取りも、比較的若い世代にとっては、相手を傷つけないように婉曲に断るときの「定番・鉄板フレーズ」として「大丈夫です」を使うのは当たり前のようになっています。
そんな現状を追認する形で、近年出された辞書の多くには「俗」と断りを入れながら「相手の勧めを断る婉曲な(遠回しな)言い方」と記されています。
「嫌です」「NGです」ではあまりにあけすけだと感じる、優し若者世代に支持された「婉曲な断りフレーズとしての【大丈夫です】を上手に使えないと「あなたの日本語は留学生レベルです」と言われかねません。
同じ言葉で正反対の意味になる言葉「大丈夫です」の意味するところが「OK」なのか「NO」なのか?
瞬時に読み取る技が必要な時代となっています。

元文化放送アナウンサー。49歳で東京成徳大学大学院心理学研究科に進学し心理学修士号を取得。精神科クリニックに勤務し、シニア産業カウンセラーとしても活動。英語・北京語も堪能。アナウンサーとカウンセラー両方の経験を元に梶原メソッドを考案。オンライン話し方教室「ツタバナ」を始め、自ら塾長を務める。