梶原しげるです。
この2〜3年、「気になる言い方」が、若者を中心に広がっています。
「何なら(なんなら)」が、従来とは違った使われ方をしてるのです。
これまでは「何なら」は、こんな風に使われていました。
A氏:「私って、明太子大好き人じゃないですかあ」
B氏:「ほお・・何なら本場博多の明太子、買ってきましょうか?」
A氏:「えー?!そんな、いいんですかあ?」
B氏:「たまたま日帰り出張で博多に行く用があるんです、何なら博多人形も?」
なんだかわざとらしい例となってしまいましたが・・・
この会話に登場した「何なら」は「もしお望みなら」「お好きなら」「お嫌いでなければ」
「良ければ」「必要ならば」という意味で使われて来ました。
仕事を終えて帰宅の途につく同僚同士の会話。
A氏:「梅雨時はムシムシして嫌ですねえ・・会議も長引き、喉も渇いたし・・・」
B氏:「何なら、帰りに一杯ご一緒しませんか?何なら生ビールでも」
(もし良かったら)
A氏:「いいですねえ!何なら、そこの角を曲がったところに、行きつけの店があるんですよ」
(気に入っていただけるかどうかわかりませんが、と「ぼかす言い方」)
B氏:「そりゃあ良い!!何なら、ギンギンに冷えた日本酒なんかも良いですねえ!」
(よろしければ)
A氏:「何なら、次の機会と言うことにしましょうか?」
(都合が悪いなら、と、ぼかす言い方)
数年前までは「何なら」はこういう場面で使われてきました。
ところが、今、若い連中は「何なら」をこんな文脈で使用していると、最新の辞書にも用例としてしっかり記されているのです。(三省堂国語辞典最新第八版)
「あの番組好きだった。何なら(なんなら)毎週見てました」
この「何なら」は「しかも」「それどころか」「もっと言えば」など、「毎週見てた」を強調する「副詞」として機能しています。
「強調語としての何ならに不慣れな「中高年世代」には、強い違和感や不快感を覚えるかも知れませんが、一方で
「え?!何ならのどこがおかしいんですか?」と目を白黒させる若い連中もいるようです。

元文化放送アナウンサー。49歳で東京成徳大学大学院心理学研究科に進学し心理学修士号を取得。精神科クリニックに勤務し、シニア産業カウンセラーとしても活動。英語・北京語も堪能。アナウンサーとカウンセラー両方の経験を元に梶原メソッドを考案。オンライン話し方教室「ツタバナ」を始め、自ら塾長を務める。